泊まっていた宿には、ラッキーなことに
無料のタンゴレッスンがついていた。
フィリピンのおじさんと踊ったり、
エチオピアでアリ族と踊ったり、
キューバでフランス人と踊ったりと、
踊ることは、旅をたのしむうえで
欠かせない存在になっている。
下手くそでも、一緒に踊っていると、
相手がいい表情になるダンスのチカラ。
踊るたびに、踊ることがどんどん好きになる。
アルゼンチンのダンスと言えば、
アルゼンチンタンゴ。
100年以上前に、ブエノス・アイレスの
ラ・ボカ地区で生まれたものらしい。
ぼくのアタマの中のタンゴといえば、
歌の「黒猫のタンゴ タンゴ タンゴ
僕の恋人は黒いネコ♪」くらいのものだ。
まあ、百聞は一見にしかず、百見は一踊にしかず、
無料のレッスンに参加させてもらった。
参加希望の宿泊者が集まり、
はじめに、音楽が流れ、先生ふたりの
デモンストレーションがはじまる。
互いの脚を引いたり、出したり。
まるで聞き役になったり、話役になったり、
おしゃべりをたのしむように踊るふたり。
レッスンではボックスの動きを教わった。
タンゴは、男性がリードして、
女性がそれについていくといったダンス。
先生たちは手をつなぎ、目を瞑りながらでも
男性のひっぱる動きを女性が感じて
ステップを踏むことができると言った。
だからこそ、相手との距離が非常に近い。
これは宿泊者同士の恋がはじまる予感だが、
ぼくのダンスパートナーは、ドイツ人のおじさん。
男女比が合わず、ドイツ人のおじさんが
女性役を買って出てくれたのだ。
他のペアはみんな知り合い同士みたい。
ボックスの次は、女性が男性の脚に
脚を絡ませたり、脚を美しく魅せるステップ。
身長が185cm近くあって、
ぼくよりも大きいドイツ人のおじさん。
そんなおじさんをぼくが支えながら、
おじさんはマジメに女性のように脚を絡める。
ここは、ゴールではない、いつかどこかで
アルゼンチン美人と踊ることがあるかもしれない、
それまでにステップを覚えておくんだと、
いつかの夢を見てぼくもマジメに踊る。
外から見たら、180cm近くの男ふたりが
下手でマジメにタンゴを踊ってるんだから
きっとシュールだっただろう。笑うがいいさ。
ただ、ヘンタイに聞こえるかもしれないが、
おじさんとでも踊るのはたのしい。
練習したものができたとき、うれしくなる。
次の日、タンゴに魅せられたぼくは、
本場のアルゼンチンタンゴを観てきた。
夜10時レストランで、ワインを飲みながら
タンゴを鑑賞できるようなステキな場所だ。
ふたり座れるテーブルに案内され、
ここでこんな夜に誰かと相席になったらと、
恋のはじまりを想像する。
店のスタッフがどなたかを、
ぼくのいるテーブルに案内する。
「はじめまして」またしても、おじさんだ。
しかも、奇跡的に日本人のおじさん。
もってるぜ。へへへ。
ダンスショーがはじまると、
男性がリードするタンゴだけど、
タンゴは、女性が主役のダンスだと思った。
淡々としなやかに脚を絡ませ、
男性に身を任せて踊る姿は、
品があるのに、エロい。
会場にいた男性みんなが、
女性のダンサーに恋してたんじゃないかな。
少なくとも、ぼくは。
ごめんよ、ドイツ人のおじさん。
それでは、今日も、明日も、明後日も、いい1日を。
踊るって、生命力の解放だ。
このときの場所/アルゼンチン ブエノスアイレス
現在地/スペイン
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