まさかの泥棒に遭遇

あああ、私としたことがやられてしまった。
油断をしていたのか、盗まれてしまったのです。

その日、ぼくはタンザニアのムベヤで
SIMカードを買いに、携帯通信会社に行った。
そこでSIMを買い、インターネット接続
してもらい、お腹が空いたので、
オススメのお昼ご飯の場所を聞いて、
地元の食堂のような場所へ向かった。

米と野菜とチキンのプレートをオーダーし、
ドアのない入り口を背に席につく。
食堂のテレビで流れるサッカー中継を
観ながらご飯をほおばっていた。

「ごちそうさま」して、ゆったりテレビを
観ていとき、その事件は起きた。

急に後ろから男が来て、盗んでいったのだ。
あまりにも突然なことで、お皿を片づける
店員さんかと思ってしまった。
男の年齢は４０歳後半くらいだろうか。

その男は、ぼくを嘲笑うかのように、
それを盗んだあとも逃げ去るでもなく、
他のお客さんに、「何かくれ」と
手招きをしているではありませんか。
その間、ぼくは唖然として何もできないでいる。

店員さんは、彼を掴まれるわけでもなく、
「しっしっ」と向こう行きなさいという
ハンドジェスチャーをやっているだけ。

あっ、そうそう何を盗まれたのか、
言い忘れていましたね。
盗まれたのは、ぼくのお皿に載っていた骨。
チキンの骨です。

だから、ぼくも店員さんも、
その男を追いかけて掴まえるほど
怒ることはできなかったのだ。

自分が食べおえたチキンの骨を盗まれるって、
つよい怒りが沸騰するわけじゃないけど、
それでも気持ちはよくないものだ。
名付けようの感情が沸きあがる。

彼の名は（勝手に）「Mr.ボーン」。
今日も人と法の目をかいくぐって骨を盗み、
ハイエナのように残り物を食べていることでしょう。

タンザニアのムベヤに行ったら、彼の獲物に
ならないよう骨に充分気をつけてください。

「カルシウム摂取しよう」みたいになっちゃった。

それでは、今日も、明日も、明後日も、いい１日を。
骨を盗むという、思考に至ったのがおもしろい。

このときの場所／タンザニア ムベヤ
現在地／日本一時帰国

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