トゥルミの村には、お山の大将がいる。

185cmほどの長身で、ガタイもいい彼は、10人以上もの手下を抱えながら、
外国人のハマル族村への訪問や、
「ブルジャンピング」という成人儀礼などの
ハマル族の観光をとり仕切っている。

彼のやり方は、彼が観光客からお金をもらって、
安い金でガイドやバイクは他の手下にやらせる。
手下に仕事をやる代わりに「オレに従え」と
いう仕組みだ。

一緒にトゥルミに泊まっていたイギリス人のサムは、
「彼はマフィアだ」って言ってた。

彼を見ていると、マフィアのやり方や
あり方を勉強できる。

ぼくが彼の手下に提示された価格と、
彼が言ってる価格が違くて、
「誰がそんな価格を言ったんだ?」と聞くので、
「彼だよ」と話をしていた手下を伝えると、
「お前が言ったのか?」と怖い顔で問い詰める。

手下はうつむきながら「いや、言ってません。」
村の大将「言ってないみたいだぞ。」
「いや、君のブラザーだからそう言うよ。」
とぼくが言う。

それはそれは、いっときの旅人よりも、
村の大将の味方になるわな。
村の大将たるもの、手下を縮こまらせ、
そのぶん自分が膨らんで大きくみせるのだ。

違う場面では、村の大将がぼくが泊まっている
ホテルのレストランに来たとき、
大将の一派と同じテーブルにぼくは座っていた。

一緒に座っていた彼が村の大将に黙って水を注ぐが、
グラスが汚かったのか、なんなのか、
村の大将はグラスをホイッとやって水を捨て、
もう一度水を注げと無言の態度で示す。

手下は下向きにへへへと苦笑いしながら、
また水をすばやく注ぐ。
村の大将たるもの、簡単にはありがとうと言わない。

アフリカでは貴重な飲み水を捨てるってのも
一種のパフォーマンスなのかもしれない。
おれは、価値あるものを簡単に捨てちゃうんだぜ。
そんなおれって、価値あるだろう。的な。

村の大将が、ぼくとサムに提示した
バイクの移動費があまりに高かったので、
ぼくらは他のバイクを村で探すことにした。
ひとつのお店にいた人が探してあげると、
電話をしてくれた。

すると突然、どこで情報を手に入れたのか、
村の大将が猛スピードでバイクでやってきて「今日のイベントはキャンセルだ。」と、
言いはじめる。

電話をしていた人も村の大将にビビって、
さっきまでの態度とは豹変し、
「彼を通さないとダメだろうが」と
口角に泡をためながら言うじゃありませんか。

きっとサングラスをかけた手下が、
ぼくらをつけて村の大将に伝えたのだろう。
小さな村では、村の大将の手下によって
外国人の行動が監視されている。

裏切り者を許さないのがマフィアの仕事だ。
他の村人も村の大将に逆らうと、
生きづらいのだろう。

あなたが村の大将のいる小さな村で生きていたら、
どうしただろうなあ、と考えてみてください。
彼の手下につくかな?
自分が大将になるかな?

ぼくだったら、手下にはならないだろう。
かと言って、大将の首をとるなんてことも
しないだろう。
ぜんぜん違うコンビニみたいな店でもつくって、
「またやってるよ」と、のほほんと商品を
売ってるいるんじゃないかな。

明日は、マフィアのいるトゥルミにいた
嘘をつかない子どもの話です。
彼らのような一派が牛耳る小さな世界に、
新しい芽がすくすくと育ってます。

それでは、今日も、明日も、明後日も、いい1日を。
お山の大将は、次のボスを恐れて抑止するんだから、
きっと疲れるよね。

このときの場所/エチオピア トゥルミ
現在地/南アフリカ

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