マケドニアのオフリドで夜ごはんを食べようと、
にぎわっているローカルレストランに入り、
「入れます?」と店員さんにたずねる。

「いっぱいです。」ということで、
他のお店を探そうと立ち去ろうとしたとき、
渋いおじさんが「よかったら、
この席に座りなよ」と言ってくれたので、
おじさんの座るテーブルについた。

映画『007』のボンド役ダニエル・クレイグ
という俳優をやわらかくした感じの、
黒いレザージャケットを着ていて、
紐付きのメガネをかけているおじさんだ。

おじさんがマケドニアのチーズを分けてくれた。
うん、濃厚でおいしい。

この街に住んでいるというおじさんが
「この街はどうだい?」と聞くので、
「うつくしい街ですね。これから日本人も、
もっとたくさん来るよ。」と言った。

「そうか、でも観光は9月までだな。
10月になると冬になるからなあ。
冬になるとぜんぜん稼げないんだ。」と言う。

おじさんの友だちのなかには、
月に200ユーロ(約26,500円)と
低い給料でやりくりしてる人もいるという。

だから、子供や親戚なんかが海外に出て、
仕送りをしないとやっていけないんだとか。

仕送りのない家庭なんかは、
「200ユーロでどうやって生きていくんだ」
とおじさんが熱く語る。

優秀な人が外に出てしまい、
その場所が育たないというのは、
どこの国や、田舎でも同じだ。

「アルメニアでも、優秀な人が外に出て、
国が育っていないと聞いたことがあるよ」
とぼくが言うと、
おじさんは「ああ同じ問題だな。
でも、アルメニアとは違う部分もある。
われわれは人が困っていたら、
助けるような人柄をもっているんだ。」

おやじ、自分の国を買いかぶってるな、
と思うかもしれないが、そんなこともない。

確かにマケドニアは、困っていそうなときに
話しかけて教えてくれる国だ。

教会に行ったら、
ここでお祈りをするんだというおじさんがいた。
トイレの洗面台で水がでないとき、
ここを押すんだと教えてくれた。
お店で買い物すると、必ず「ありがとう」
「バイバイ」と言ってくれる。
静かに、やさしい人が多い。

そして、おじさんは5つの言語を
話することができるのだと言う。
「すごいね」と言うと、
他の人も5歳から教育を受けていて、
割と普通に複数の言語を話せるのだとか。
たしか、マケドニア語、トルコ語、英語、
ドイツ語、フランス語だったような。

冬の観光客減少問題と、
優秀な人が外国へ行ってしまう問題は、
ちょいと脇に置いておいて、
日の当たる場所を見てみると、
この国すごいポテンシャルもってるかも。

「うつくしい景色」と、おじさんの言う
「ホスピタリティー」と「5つの言語」が
掛けあわされば、きっとこの街は
もっともっと人でにぎわうだろう。

それでは、今日も、明日も、明後日も、いい1日を。
日の当たる場所を見ると、
なんでもポテンシャルがあるかも。

このときの場所/マケドニア オフリド
現在地/エジプト

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