バングラデシュのダッカに移動するために、
砂煙立つ街の中、タクシーで移動して、
カトマンズのトリブバン国際空港に着く。
すると、涙を流している2人の女性がいる。

2人は、それぞれ異なる彼氏なのか、
旦那さんなのかを見送っているのだ。

窓にはりついて、涙ながらに男性を見つめる女性。
荷物チェックの列に並びながら、
涙をこらえている1人の男性。
悲しみ隠すために明るく振る舞い、
女性に投げキッスをするもう1人の男性。
そして、なぜかそのドラマの間にいる、ぼく。

その間にいるだけで、ぼくもうるっときてしまう。
なんで、涙は伝染するのだろう。

人がひたひたと汗をかいていても、
汗は他の人に伝染しない。

人がヌルヌルと鼻水をだしていても、
鼻水は他の人に伝染しない。

人がダラダラとよだれ垂らしていても、
よだれは他の人に伝染しない。

人がじゃーじゃーとおしっこしてても、
おしっこは他の人に伝染しない。

人がポツポツと血を流していても、
血は他の人に伝染しない。

なぜ、涙だけ、伝染するのだろう。
なぜかを考えてみると、涙が流れる手前に、
感情があるからじゃないかな。

他の人間から発する水分には、感情がない。
悲しくて、涙と一緒に鼻水が出て来ること
なんてのも、あるけどね。
感情がきっかけで、血が流れるだろうがとか
今は言わないでね。

これって、コトバも同じかもしないぞ。
コトバにも、汗のようなコトバ、
鼻水のようなコトバ、よだれのようなコトバ、
おしっこのようなコトバ、
血のようなコトバがある。

でも、人間から発する水分に、
伝染するものと、しないものがあるように、
人間から発するコトバにも、
伝染(感情が揺れる、共感される)するものと、
しないものがある。

その理由は、そこに感情があるかどうか。
そして、受ける側がその感情を過去に
経験したことがあるかどうか。

甲子園をテレビで観ていて、
負けた球児が泣いている姿が映し出されると、
ぼくは決まってうるっときてしまう。

ぼくは甲子園球児ではないけれど、
感情のある悔し涙と、
たくさん負けた自分の経験が涙を誘うのだ。
負けた選手のインタビューにも伝染してしまうよ。

それでは、今日も、明日も、明後日も、いい1日を。
涙には悲しいものもあれば、うれし涙もある。

このときの場所/ネパール カトマンズ
現在地/ジョージア→トルコ

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