人間の目には見えていないけど、
そこにあるものは数え切れないほどある。
そのひとつとして、「風」がある。
そんな「風」を、自転車に乗って感じた。

マダガスカルから南アフリカへ、
飛行機に乗って移動した翌日、
朝早くから電車とバスを乗りついで
シモンズタウンという場所まで来た。
ここから喜望峰まで自転車で行けるのだという。

キヨスクのおじさんから自転車を借り、
喜望峰の方向へと漕ぎ出すも、
ぜんぜん前に進まないではないか。

自転車がわるいわけではない。
ギアチェンジができる上等品だ。

坂道も多いんだけど、それだけではない。
風がこちらに向かって吹いているのです。

アニメのジブリなんかだと、
主人公なんかが坂道を自転車で下るとき、
股を大きく開いて気持ちよくスピードに
乗っている、なんて映像が目に浮かぶけど、
ぼくの道のりは下り坂でも、爽快感ゼロ。
漕がないと進まないくらいだ。

風のスピードがはやくて、
地面に映る、空とぶ雲の影が、
こちらにビュンビュンと当たってくる。

えいこら、えいこらさと、漕いで、
やっとこそ、喜望峰に着いた。
アフリカを南下してきたわけではない、
これから北上するぼくにとっては、
そこまで感動するものでもなく、
写真を撮って、また自転車を漕ぎはじめる。

帰り道のまあ、らくなこと、らくなこと。
下り坂が多いってのもあるんだけど、
風が背中を押してくれるのです。

空とぶ雲の影といっしょに、帰ることができた。

そこにある風が敵になることもあれば、
味方になってくれることもあるんだなあと。
見えない風だからこそ、読むのはむつかしい。
今、世界に、日本に、
どんな風が吹いているのだろう?
それを感じながら、進むのがいいのだろうね。

それでは、今日も、明日も、明後日も、いい1日を。
風さんよ、味方になっておくれ。

このときの場所/南アフリカ 喜望峰
現在地/ウガンダ

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