はじめて人の絵を描いて、お金をもらった。
手がふるえた。
はじめてのお客さんは、とてもステキな人だった。
パリの路上で、人の名前を日本語
(ひらがな、カタカナ、漢字かれ選んでもらう)
で描いてバスキング(投げ銭)を
やっていたときのこと、フランスの美大生に、
「それは誰でもできる、あなたの
イラストのほうがおもしろい」と言われ、
人のイラストを描くのを図書館を見つけては、
写真集を開いてこっそりと練習していた。
ここに書いているんだから、
もうこっそりじゃなくなるね。
はじめて、人の絵を描いたのは、
オランダのゴッホ美術館の近く。
ゴッホが日本画に影響を受けたこともあり、
この美術館には、ゴッホの作品以外にも、
日本画が展示されている。
タオルの上に図書館で描いた人の絵を
何枚か置き、床に座って待つこと2時間。
ひとりの足が止まった。
「わたしのこと、描いてくれるの?」
と言う女性。
陶器をつくり続けて早30年というような
陶芸家のような顔をして「はい、もちろん」
と言葉短めに言うぼく。
あなたが、はじめてのお客さんだなんて、
言えない。
写真を1枚撮らせてもらい、
「じゃあ、10分後に帰ってきてください」
と伝え、ペンを握る。
カラダのなかがじわじわと熱くなり、
道を歩いてる人にも聞こえるじゃいかと
いうくらい心臓の音が高鳴る。
やるしかないのだが、さいしょは手がふるえる。
いったん描きはじめると、周りのざわつきや
時間を忘れて、いつのまにか描きおえていた。
花束を後ろに隠して
彼女のことを待つ日本男児のように、
早く来ないかなあとそわそわしながら、
女性のイラストをもってお客さんを待つ。
10分後に、女性が帰ってきた。
ぼくの描いたイラストを見て、
「Beautiful」と第一声。
その言葉に30年修行している
陶芸家のような顔はできない。
逆上がりがはじめてできて、
褒められた子どものような得意げな顔になって
「本当?ありがとう」と言う。
女性の名前は、マッジさん。
聞くところによると、オーストラリアで
ジュエリーショップをやっているんだと。
見た目がかっこよくて、すてきな方なんだけど、
中身もかっこよくて、すてき。
「どうしてオランダを旅してるの?」と聞くと、
「色を探しに来たの」とマッジさんは言う。
「ほへっ?」と思ったけど、マッジさんが
携帯電話のなかの写真を見せてくれた。
撮影した写真には、建物や石の色など、
マッジさんがオランダで撮影した
きれいな色があった。
言われてみれば、国によって、地域によって、
建物の色、ファッションの色、街の色は
ぜんぜんちがう。
旅をしている理由を聞かれたとき、
「色を探しに来たの」このフレーズは、
かっこよすぎて、マネさせてもらおう。
「わたし、今日ふたつの美術館行くから、
またね。うーん、5ユーロないから、
これでいい?」と、
4.5ユーロを手渡してくれた。
はじめてのお客さんは、とてもすてきな人でした。
それでは、今日も、明日も、明後日も、いい1日を。
あなたが最近すてきだなあと思った人を教えてください。
このときの場所/オランダ アムステルダム
現在地/アメリカ シアトル
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